あなたの精子は大丈夫?
射精できているのだから自分は不妊症でないとは言い切れません。射精能力が正常でも、精子そのものの数が少ないか、精子の運動能力が低いために、射精しても卵管まで辿りつけないのかもしれません。
健康でありながら、避妊せずに性交してもなかなか妊娠に結びつかない。そんなときは、造精機能障害の可能性があるので、泌尿器科で精子力検査を受けてみることをおすすめします。
男性側の不妊症の原因で最も多いのは、造精機能障害のひとつ「乏精子症」で、精子の絶対数が少ないこと。実は、若い男性の精子の数はこの50年ほどで約4割も減少しています。ヨーロッパで1万5千人の若い男性を対象に精子の数を調査したところ、1940年代には精液1mlあたり1億3000匹も精子があったのが、1990年代には1mlあたり約8000万匹に減っていました。なんと38%も減少していることが分かり、世界に大きなショックを与えました。ヨーロッパだけでなく、日本でも同様の調査結果が報告されています。
なぜ、精子の数が減ってしまったのか?外的環境から受ける心理的ストレスの増加、食生活の変化などが一因と言われていますが、明確な理由は分かっていません。また、残念ながら一度減ってしまった精子の数を増やす方法も確立されていません。
精液検査を受けてみましょう
病院では、採精室で自慰をして精液を採取します。精液の量、PH値、白血球値のほか、1mlあたりの精子の数を調べ、精子の運動率を算出します。また、形が正常な精子の割合と精子の生存率も調べて、精子の健康度合いをチェックします。
精子の数が少ない状態は「乏精子症」と呼ばれます。WHO(世界保健機構)の基準では、精液1mlあたりの精子の数が2000万個以下だと乏精子症と診断されます。
数は十分にあっても、精子の運動率が低いような状態は「精子無力症」の可能性があります。WHOの基準では、運動精子率が50%以下だと精子無力症と判断されます。
※一度の検査ですぐに不妊症と診断されるわけではありません。精子の状態は肉体的疲労度や心理的状態によって変動しやすいので、何度か検査を受けてから確定診断されます。精子力検査は基本的に自費診療で、1万円前後です。
もし、異常が分かったら
検査の結果、乏精子症または精子無力症と分かれば不妊治療の方向性が決まります。一般的には男性ホルモンを投与して精子を元気にする治療を行います。しかし、ホルモン療法を長期間続けるとホルモンのバランスが崩れて逆に精子の能力が低下するので、次の段階は人工授精をすすめることになります。